現代人は月経が多い! 月経とピルについて

避妊を目的に使用されるピルですが、避妊効果以外にも実は月経に伴う痛みを抑える効果や月経量を少なくなる効果など副効用も知られていました。副効用を主効用として狙って、月経困難症や、子宮内膜症に対してピルが保険適応されるようになった流れがあります。

ピルは、エストロゲンとプロゲステロンの合剤ですが、避妊目的で使用されるものをOC(Oral Contraceptive:経口避妊薬)。月経症状の改善や子宮内膜症など疾患の治療目的で使用されるものをLEP(Low dose Estrogen/Progestin)と言われています。

最近では、低用量ピルの連続投与によって月経の来る頻度を最大で120日間(約4ヶ月)に1回に減らす治療もあります。体質によっては、120日間より前に月経が来てしまうこともありますが、上手に利用すると月経をコントロールすることが可能です。どうしても月経が来て欲しくない日に月経が来ないようにずらすことも可能です。

近年の少子化の流れもあり、現代人は妊娠・出産数が昔と比べて少なくなっており、月経を経験する回数が増えていると言われています。月経によって悪化する子宮内膜症の頻度は増えています。また、月経に関する症状も多く経験することになります。

ちなみに妊娠1回すると、妊娠期間中の約10ヶ月間は月経来ないのと、産後も2-6ヶ月くらい(授乳の有無や個人差によってだいぶ変わりますが…)月経来ないです。(なお、産後月経はなくても排卵している場合があるため、妊娠する可能性はあります。なので、産後すぐに妊娠を望まない場合は避妊が必要です)。1回妊娠すると、もともと月1回月経来ていた人は、12-16回程度月経回数が少なくなることになります。 昔の子沢山の時代から比較すると圧倒的に現代日本人は月経を経験することが多くなっています。戦前までは、生涯月経回数は50回程度と言われていますが、現代では生涯月経回数は400回程度と言われています。晩婚・少子化に加えて、栄養環境が改善され発育が良くなり初潮(初めて来る月経のこと)の低年齢化していることが原因と言われています。

薬をうまく活用して、月経回数を減らすことも可能です。さらに月経の症状をコントロールすることも可能です。月経とうまく付き合っていくことが、女性の健康管理や生活の質を上げることにつながると思います。

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生理をずらしたい!月経移動について

ちょうど生理(月経)が来る日と旅行が重なってしまう、大事な日に生理が来てしまうなど、どうしても生理が来て欲しくない日があるかと思います。 そんな場合、薬によって月経をずらすことが可能です。ただし、あまりに直前過ぎると月経の日を調節することが難しい場合もあるので、事前に受診して相談しておくことが大事です。

月経を移動するために、女性ホルモンと黄体ホルモンを含む中等量ピルと呼ばれている薬を使用します。ちなみに、避妊のために使用されるピルは含まれる成分が比較的低用量であり、低用量ピルと言われています。

月経を遅くしたい場合は、月経の予定日の3-5日前から中等量ピルを内服開始します。そして、月経が来ないで欲しい日まで連日内服します。内服が終了すると、個人差はありますが、2-5日程度で月経が来ます。 逆に月経を早めたい場合は、月経開始5日目から中等量ピルを内服開始します。そして、月経を来たい日の3-5日前まで(最低でも10日間以上内服の継続が必要)内服します。投与方法を守らないと失敗する場合があります。 月経を早める方法は、中等量ピルの飲み始めの時期が限られていること、結果として月経を7-10日程度しか早めることが出来ないこと、失敗することが多いので、通常は遅らせる方法を選択します。

うまく、薬で月経を移動させて、どうしても月経が来てほしくない日を避けるよう調節して、快適な生活を過ごせることを願っています。

やばい!避妊に失敗してしまった…緊急避妊法について

望まない妊娠を防ぐためにも避妊法が重要です。妊娠を継続して産む選択をした場合も、とくに中絶を選択した場合も、心身ともにダメージを受けるのは女性側がメインになります。経済的な負担や周囲からの批判など社会的なダメージも受けることになります。責任は基本的には男女平等であるべきだと思いますが、妊娠可能な性としての女性の宿命ともいえます。自分の体は、自分で守るしかないです。望まない妊娠を防ぐためにも避妊法に関する知識は当たり前に身に付けてほしいです。

基本的には普段の避妊法が大事ですが、例えばコンドームが破損した、実は穴が開いていた、ピルを飲み忘れたタイミングで性交渉した場合など避妊に失敗する場合があります。そういった場合等に、緊急避妊法があります。なお、避妊せずに行われた性交または避妊したものの避妊手段が適切かつ十分でなかった性交をUPSI(Unprotected Sexal Intercourse)と言います。

・LNG単回法・Yuzpe法・銅付加子宮内避妊具の3つ。

緊急避妊法は、飲み薬による方法と子宮内避妊具を挿入する方法があります。飲み薬は、性交後72時間以内にノボノルゲストレルという薬を1回飲むLNG単回投与法と、性交後72時間以内に中等量ピルを2錠飲み、さらに12時間後に2錠飲むYuzpe法という方法があります。内服以外の方法として性交後120時間以内に銅付加子宮内避妊具を使用する方法があります。 Yupze法と比較して、LNG単回投与法は避妊効果が高く副作用も少なくWHOなどで推奨されています。しかし、値段は高めです。銅付加子宮内避妊具は有効性が高いですが、高価であり長期の避妊を目的とした場合以外にはあまり使用されていません。 内服薬の副作用として、吐き気が多いです。他に下腹部痛・頭痛・胃腸障害・眠くなること等があります。産後授乳をされている方は、LNGは乳汁に移行するので、内服後24時間は授乳を避けるよう注意が必要です。

緊急という名前がついていますが、今すぐ飲まなければならないというわけではないです。夜に性交渉をして避妊に失敗してしまった場合に、深夜に緊急避妊薬(モーニングアフターピル・アフターピルとも言われている)を求めて救急外来受診する患者さんもいます。救急外来では緊急避妊薬処方に対応していない所が多いです。緊急避妊薬を飲むまでに時間の猶予があるため、翌朝、日中の診療時間に受診して緊急避妊薬をもらって飲んでください。

日本では、性生活に関すること等は、あまり公にしない流れがあり、我慢を美徳とする文化であると言われています。そして、残念ながら小学行・中学校では性教育が十分に行われていない現状があり、性に関する正しい知識が十分行き渡っていないです。性生活を楽しむということに価値を重んじておらず、我慢をして禁欲することが多いようです。色んな価値観がありますが、望まない妊娠を防ぐためにも、性生活を安全に楽しむためにも、避妊に関する知識を知っておいて欲しいと思います。

避妊法について

女性には、リプロダクティブ・ヘルスおよびライツというものがあります。簡単にいうと、子供を産みたい時に産んで、産みたくない時に産まないということを自ら決定する権利を有しています。望まない妊娠を防ぐために、性に関する正確な知識を知ることはもちろん、避妊法が重要となります。望んでいないときに子供が出来ると、自分のライフプランが大きく変わってしまうだけでなく、パートナー・家族含め周囲にも重大な影響を与えることになります。

避妊法には避妊効果が高いものから低いものまで様々あります。ほとんど避妊効果が望めないものもあるので注意が必要です。ちなみに、避妊効果を示すものとしてパール指数というものがあります。これは、「その避妊法を行った場合、100人の女性が1年間で何人妊娠したか」を示したものです。つまり、パール指数が低ければ、その避妊法は効果が高いと言えます。

経口避妊薬(OC:oral contraceptive)、子宮内避妊具(IUD:intrauterine device)、不妊手術、男性用コンドーム、女性用コンドーム、ペッサリー、周期的禁欲法(オギノ式など)、殺精子剤、腟外射精、薬剤投与(インプラント・皮膚パッチ剤・注射剤)などあります。 女性用コンドーム、ペッサリー、殺精子剤は日本で一般的に販売されておらず入手するのが難しいです。 この中で効果が高いものは、不妊手術(パール指数:0.1-0.5)、子宮内避妊具(パール指数:0.5)・経口避妊薬(パール指数:0.3-1.0)・薬剤投与(日本においてインプラント・皮膚パッチ剤・注射剤を避妊目的で使用するのは未認可)です。

不妊手術は、男性であれば精管結紮(いわゆるパイプカット)、女性であれば卵管結紮を行います。女性で帝王切開を何回も繰り返している方であれば、帝王切開の際に一緒に行う場合が多いです。また、経腟分娩の場合は産後すぐの子宮が大きいうちに手術することもあります。

子宮内避妊具は、銅付加子宮内避妊具(CopperIUCD)・子宮内避妊システム(LNG-IUCS)などあります。子宮口から子宮内避妊具を挿入するので、婦人科外来で挿入可能です。ただし、子宮筋腫などで子宮内腔が変形している人には挿入できない場合があります。

経口避妊薬は、エストロゲン・プロゲステロンというホルモンを含んだ薬を飲む方法です。排卵を抑制する効果と子宮内膜を薄くして着床を防ぐ効果があります。 女性主体の避妊が可能であり、避妊以外の副効用(月経痛が軽くなる、月経量が少なくなる、肌の調子が良くなる等)もあります。海外ではエストロゲン・プロゲステロンを含む皮膚パッチ剤でプロゲステロンが長期溶出してくるインプラント、長期に作用する注射剤の使用などが行われています。

日本で一番普及しているのが男性用コンドームです。性感染症の予防、男性の避妊産科が出来るという利点がありますが、女性主体の避妊が出来ない事、破損・脱落などで避妊失敗してしまう欠点があります。

実際の日本において施行可能性や効果を考慮すると、経口避妊薬、子宮内避妊具、不妊手術が望ましいと考えます。いずれも産婦人科を受診して行うもしくは処方を受ける形となるので、身近に避妊など相談できるような産婦人科のかかりつけを見つけておくと安心です。それら方法に性感染症予防のためコンドームを併用する二重防御法が有効です。

これは不平等だという人もいますが、妊娠した場合一番影響を受けるのは男性でなく妊娠可能である女性です。避妊法に対する正しい知識を持ち、望まない妊娠を防ぎましょう。

病院の役割と受診について思うこと

病院には役割があります。患者として受診する際には、病院の役割を頭に入れた上で受診をして欲しいと思います。

大病院信仰というのがあり、症状は大したことがない人が大病院を受診するケースが多く、待ち時間がとても長くなってしまっている現状があります。もちろん大病院は高価で専門的な検査が出来て、専門的な治療を受けることが出来ます。 しかし、実は病院を受診する人の多くは専門的な介入を要する人はそんな多くないです。また、そういった人含めて沢山の人に検査をやり過ぎてしまい、その検査結果の解釈が難しい場合も出てきます。over diagnosisによる弊害として最近問題になってきています。

基本的には、かかりつけ医を持っておくのが一番ですが、かかりつけ医を掲げているクリニック・病院そして総合的に診察出来る医師は日本において少ないのが現状です。日本の伝統的な医局制度の流れから各臓器別の専門家は多い構造になっています。そういった中、いわゆる総合診療科が注目されており、テレビでドクターG等にも取り上げられています。誰でも診察治療をして、自分の手に負えないような病気は専門医に紹介する役割を担っています。 また病気だけでなく、その人の生活背景・その人の病気になるようなバックグラウンド等に迫って、その人がより良く生活するのはどうすれば良いのか含めて考えてくれる医師も増えています。
かつてないほど日本は高齢者人口が多い状態です。高齢になると病気を複数持つことが当たり前です。複数の病気を抱えている患者をみることが出来る能力も非常に重要となってきますので、今後も総合診療科の活躍が期待されます。

まずはかかりつけ医→場合によっては専門という流れが理想であり、厚労省も掲げているところです。しかし、現実には普段から通院していて慣れている医療機関や、口コミで人気の医療機関に受診することが多いようです。 ひどい場合だと、子宮筋腫で婦人科に1回だけ受診した人が、時間外に実は呼吸が苦しいからみてくれと来るケースなどがあります。これは残念ながら専門が違いますし、時間外でもあり、呼吸苦という主訴から、その地域の救急当番に受診するべきです。そして症状が切迫緊迫している状態であれば、救急車を呼んで受診するべきでしょう。

たしかに対応やサービス面でひどい医療機関はあり、人気病院・通いなれた病院に行くのは心情的に理解できます。しかし、そういった流れによって患者の偏りを生じてしまい、医療制度自体が崩れてしまう可能性すらあると思います。 医療ニーズが発生したときに、適切な医療機関に受診することで医療機関の機能が発揮しやすくなり、全体としても最適化されます。医療機関の最初の入り口で間違ってしまうと、無駄な検査や診療を経てしまうため、医療資源の無駄使いとなってしまうと思います。

是非とも医療機関を受診する際は、しっかりと考えたうえで医療機関を選択して欲しいです。また、判断が難しい場合もあるため、受診する前に電話等で確認することをすすめます。

出生前検査について

最近話題の出生前検査です。新しい検査でNIPT(無侵襲的出生前遺伝学的検査)というものがあり、メディアでも取り上げられることが多く、知っている人が増えてきています。この出生前検査の結果によっては、中絶などの選択をする場合もあり、命の選別にもつながる検査です。安易に出生前検査を受けるケースが多くなっています。また検査結果が出て、その解釈がよくわからない等の事例もあります。必ず、検査自体を受ける前に十分な説明・カウンセリングを受け、納得した上で検査を受けることが重要です。出生前検査は、NIPT以外にも様々ありますので、それらについて紹介したいと思います。

出生前検査には、非確定的検査と確定的検査に分けられます。

非確定的検査には、NT(Nuchal Translucency)検査・母体血清マーカー検査・NIPT(Non Invasive Prenatal Testing)などがあります。 NTはエコーで胎児の首の後ろのむくみの厚さを測定します。妊娠11-13週までに行います。NT測定値と患者背景などの情報から染色体異常の確率が算出されます。 母体血清マーカーは母体の採血検査をします。母体の血液中に含まれている成分を測定して染色体異常の確率や開放性神経管奇形である確率が算出されます。妊娠15週以降に行われます。 NIPTも母体の採血検査をします。母体の血液中に含まれる胎児由来の成分を分析します。妊娠10週以降に行います。結果が陰性であれば99.9%の確率で染色体の変化がないですが、陽性だった場合は染色体の変化を有する可能性が高いです。ただし疑陽性(検査が陽性でも実際には染色体が正常である)の場合もあるので、染色体異常を調べるのに確定的検査が必要です。

非確定的検査は、侵襲がないですが、あくまで染色体異常の可能性が確率でわかるのみです。検査結果を受けて確定検査をするかどうかの判断するための検査という位置づけとも言えるでしょう。

確定的検査には、羊水検査・絨毛検査があります。 羊水検査は、お腹から細い針を刺して子宮内の羊水を採取して、羊水中の胎児成分の染色体を検査します。妊娠15-16週以降に行われます。比較的安全性が高いですが、胎児死亡・流産等が0.3%程度起こるとされています。 絨毛検査は、お腹から細い針を刺して絨毛組織を採取して、胎児成分の染色体検査をします。妊娠11-14週頃に行います。羊水検査と比較して流産頻度は高く、1%程度起こるとされています。確定的検査を行う場合は、一定確率で流産などの危険性があります。

出生する児の3-5%程度は何かしらの先天性疾患をもっています。先天性疾患の主な原因として、染色体疾患(約25%)以外にも、単一遺伝子の変異(約20%)、多因子遺伝(約50%)、環境催奇形因子(約5%)などがあります。染色体疾患のうち、母体年齢が上がるとともに出生児の染色体疾患の発生率が上がるものとして、21トリソミー(21番染色体が3本となる異常でダウン症候群とも言われる)・18トリソミー・13トリソミーなどが知られています。

出生前検査では、先天性疾患の原因の染色体疾患のうち一部を調べるのみです。出生前検査で問題なかったとしても、他の先天性疾患を有する可能性はあります。また、検査で安心したいからと出生前検査を行う人がいますが、検査で陽性(異常の可能性もしくは異常あり)と出てしまい安心できない検査結果となってしまうことがあります。当初は全く考えていなかったが、その検査結果を知って中絶を選択することにした人もいます。

改めて、出生前検査は命の選別にもつながる検査であるので、その検査の重みを十分理解してください。出生前検査を受ける前に十分な説明・カウンセリングを受け、納得した上で検査を受けてください。 また、妊娠週数によって出来る検査が決まっていたり、施設によって出生前検査で扱っているものが違ったりしていますので(とくにNIPTは専門のカウンセリングなど施設基準が決まっているので、出来る施設は限られています)、必ず確認してください。

更年期障害の治療

更年期障害の原因として女性ホルモンの低下があります。女性ホルモンの低下によって様々な症状が起こります。その症状に対する治療という面と、将来の健康状態を改善させるという2つの面から治療を行っていきます。

更年期障害の治療として、漢方・サプリメント・各種症状に対する薬・そしてなんといっても女性ホルモンを補うホルモン補充療法などあります。

漢方は、女性の3大漢方と呼ばれている当帰芍薬散・加味逍遥散・桂枝茯苓丸をメインに使っていきます。サプリメントは、大豆イソフラボンがあり、体内に摂取されるとエストロゲン(女性ホルモン)と同じような働きをします。また、精神症状が強い場合は向精神薬・うつ状態には抗うつ薬・不眠には睡眠薬など各種症状に対する薬を使用します。また、生活習慣・社会背景によって各種症状を呈している場合があり、カウンセリングなども重要になってきます。

女性ホルモンが低下することが主な原因であるので、減ったホルモンを補うホルモン補充療法が効果を発揮します。とくに、のぼせ・ほてりといった症状に対して有効です。 子宮の有無・月経の有無によって、薬の投与方法が変わってきます。手術などで子宮摘出した人はエストロゲンのみ、子宮を有する人は、子宮体癌予防のため、エストロゲンに加えてプロゲステロンが併用されます。月経がある人は周期投与を行い、定期的に性器出血を起こします。月経がない人は連続投与を行いますが、性器出血が不定期に来る場合は周期投与して出血をコントロールすることもします。

ホルモン補充療法の副作用として注意しなければならないのは、子宮体癌・乳癌・静脈血栓症などが挙げられます。定期的に癌検診など行うことで、より安全に治療が可能となります。 また、重度の肝疾患・子宮体癌・乳癌を患っている人などにはホルモン補充療法は出来ません。治療開始する前に健康状態を確認すること、医師と相談することが重要です。

ちなみに、日本は長寿国であり日本女性の平均寿命は約87歳です。閉経後の人生は長いため、より健康的に過ごすため、いわゆる健康寿命を高めるという視点も大事になってきます。女性ホルモンは全身の臓器に対して様々な働きをしています。女性ホルモン低下に伴う体の変化の中で自覚しにくいものとして、とくに骨と血管に対するものがあります。女性ホルモン低下によって、骨量が低下し骨粗鬆症となって将来の骨折リスクが高くなってしまいます。また、血管の硬化が進んでしまうことや脂質代謝異常症になりやすくなることによって、心血管イベント(心筋梗塞・脳梗塞・脳出血など)リスクが高くなってしまいます。 ホルモン補充療法によって、それら改善効果も見込めます。もちろん、骨量測定して骨粗鬆症が判明したら骨粗鬆症の治療薬を、コレステロールなど測定して脂質異常症が判明したら脂質異常症の治療薬を検討し導入することも重要となってきます。

更年期障害の治療は、今現時点での症状に対応することに加えて、将来の健康も考慮した上で治療戦略を練ることが重要となってきます。

エストロゲンと更年期障害

閉経以降に急激にエストロゲンは低下しますが、閉経前から徐々にエストロゲン(女性ホルモン)が低下していきます。なので、閉経前から更年期症状がみられることがあります。 エストロゲンがある一定値よりも低い状態となったら更年期症状が起こるわけでなく、エストロゲンが低下しつつある時期や大きく変動していることで更年期症状が誘発されます。

例えば、月経がある人で、両方の卵巣摘出術を受けた人や抗癌剤治療で卵巣機能が落ちてエストロゲンが急に低下してしまった場合は、更年期症状は激しく出てきます。
また、40歳前後で月経が規則的にある人が、「私更年期障害でないですか?」と心身の不調を訴えてくる人がいます。45歳未満で、規則的に月経がある人は十分にエストロゲンが保たれているので、更年期症状が起こることはまずないです。他の疾患によるものが考えられますので、症状に応じて他科疾患が疑わしい場合は紹介する流れとなることが多いです。

更年期症状は様々ありますが、エストロゲン低下と直接関連している症状は、hot flush(のぼせ、ほてり、発汗など)と言われています。とくに、のぼせは特徴的な症状であり、40-85%程度の女性が経験すると言われています。それ以外に、手足の冷え・動悸・怒りやすい・ゆううつ感・焦燥感・不眠・腰痛・関節痛・肩こり・疲労しやすい・頭痛・めまいなど様々あります。これらの症状は通常の検査では原因がつかめず不定愁訴と呼ばれています。

エストロゲン低下は、そのような自覚症状に対する影響だけではなく、体の様々な部位に対して影響を与えます。 例えば、エストロゲンの低下によって血管の動脈硬化が進みやすくなったり、コレステロールが上がりやすくなります。そうすると、いわゆる血管イベントと呼ばれますが、血管が狭くなったり、瘤を作って破れてしまう事が起こる可能性が高くなります。それが、脳の血管であれば脳梗塞・脳出血などであり、心臓を栄養している血管(冠動脈)であれば狭心症や心筋梗塞を引き起こすことになります。
また、エストロゲンの低下によって骨のカルシウムが低下し、骨量が低下し、骨粗鬆症となってしまいます。骨粗鬆症となると、そうではない人であれば大丈夫なダメージでも、すぐに骨折してしまうようになります。骨粗鬆症の人が転んでしまうと、ふとももの付け根の骨(大腿骨頸部骨折)や背骨(圧迫骨折)が骨折することが多いです。そうなると、体を動かせない→筋力低下→さらに体を動かせなくなる→筋力低下→…と負のループに陥ることになり、寝たきりとなってしまうこともあります。エストロゲンは骨の健康にも影響しているのです。

エストロゲンの低下によって、自覚症状(更年期症状)だけでなく、体の様々な影響を与えます。次回はその治療について説明していきたいと思います。

女性の体はエストロゲンの歴史

エストロゲンは、女性らしい体型を作り出すホルモンとして知られており、女性ホルモンと呼ばれています。エストロゲンは、女性の二次性徴の発現や子宮・乳腺を増大させる役割 など女性生殖器の発育や機能に深く関係しています。また、妊娠の成立・妊娠の維持にも重要な役割をしており、生殖に必要不可欠なホルモンとして知られております。

そういった、女性における生殖機能に関する働きだけでなく、男女問わず、骨・筋肉・血管・消化器・皮膚などにも作用することが知られている。また肝臓に作用してコレステロール代謝の調整、膵臓に作用してインスリン分泌調整、脳の認知機能・情動など全身に様々な作用を発揮していることもわかってきました。

エストロゲンは、女性の生涯に渡って変動しています。小児期・思春期・性成熟期・更年期・老年期と各ライフステージでエストロゲンは生涯に渡って変化していきます。逆にエストロゲンの変化でライフステージが作られているという見方も出来るかもしれません。

エストロゲン分泌は思春期から急に高まります。乳房の発育から始まり、恥毛の発現、身長の伸び、皮下脂肪の蓄積、初経などが順に起こってきます。そして、だんだんと月経が規則的に来るようになっていきます。思春期の体の変化は、他にも成長ホルモンなど必要なホルモンはありますが、エストロゲンの作用によるものが重要となってきます。

エストロゲンは基本的に卵巣で分泌されますが、閉経後のエストロゲンは卵巣からほとんど分泌されず、卵巣・副腎から分泌された男性ホルモンが皮下脂肪組織などでエストロゲンに変換されたものがメインとなります。ちなみに肥満女性では、脂肪組織から変換されるエストロゲン量が多くなります。エストロゲンが関与する疾患として、子宮筋腫や子宮内膜症の他に子宮体癌や乳癌などの悪性腫瘍があります。肥満は子宮体癌や乳癌になりやすいというデータがあります。また、女児の肥満はエストロゲン量が早期に高くなってしまい思春期を早めることになります。

そして、性成熟期においては、妊娠する場合においては排卵・受精・受精卵の子宮内への移送など妊娠成立に関してエストロゲンは重要な役割をしています。また、妊娠8週以降は胎盤(絨毛細胞)においてエストロゲンが産生されるようになって妊娠を維持するする役割もしています。

そして更年期においては、閉経する数年前からエストロゲンは徐々に低下し、閉経以降にエストロゲンは急速に低下する変化をします。なお、日本人の平均閉経年齢が約50歳であり、更年期はその前後5年間程度を差すことが多いです。そのときに起こる症状は、hot flush(のぼせ、ほてり、発汗など)・手足の冷え・動悸などの自律神経失調症状。怒りやすい・ゆううつ感・焦ってしまう感・不眠など精神神経症状。腰痛・関節痛・肩こりなど運動器症状。吐き気・食欲不振など消化器症状。その他、疲労しやすい、頭痛、めまい、排尿障害、外陰部違和感、性交痛など様々あり、更年期障害として扱われます。

今回はエストロゲンの年齢変化・生殖機能や妊娠の際の役割について説明してきました。次回ではエストロゲンのそれ以外の作用について更年期障害を考えながら説明していきたいと思います。

更年期のヘルスケア

40代から50代にかけて、様々な症状を呈することがあります。例えば、顔がほてる、汗をかきやすい、冷えや暑さを感じ体温調整がうまくいかないと感じる、息切れ・動悸がする、精神的に不安定になった、寝つきが悪いなど…。私、更年期障害かもと思って、一人悩んでいる人も多いかと思います。今回は更年期について全般的なところについて解説していきたいと思います。

この記事のまとめ

①多彩な症状は女性ホルモン低下のサイン

②更年期障害では多彩で様々な症状を呈する

③他の病気が隠されていることもあり注意

まず、更年期とは何ですかということですが、期とついている通りある時期を差します。更年期は閉経(月経が終わること)の前後の時期と差します。個人差はありますが、日本人の平均閉経年齢が約50歳であり、その前後5年間程度を差すことが多いです。閉経前後の更年期は、女性ホルモンの低下を受け、多彩な症状を呈することが多いです。また、子供が自立したり、両親の健康状態の悪化による介護問題・親戚身内が死別することなど、ちょうど様々なライフイベントを経験する時期と重なっており、そういった社会的・環境的なことが複雑に絡み合って起こる事が多いです。

更年期障害の症状は、hot flush(のぼせ、ほてり、発汗など)・手足の冷え・動悸などの自律神経失調症状。怒りやすい・ゆううつ感・焦燥感(焦ってしまう感じ)・不眠など精神神経症状。腰痛・関節痛・肩こりなど運動器症状。吐き気・食欲不振など消化器症状。その他、月経異常・疲労しやすい・頭痛・めまい・排尿障害・外陰部違和感・性交痛など様々あります。

更年期障害は、あくまで何か明らかな原因がある病気が否定されて診断されます。同じような症状を呈する病気や症状の一部が他の病気である可能性があります。さらに複雑なことに更年期障害に他の病気が合併している場合もあります。なので、更年期障害に隠れた病気がないかしっかり診察・検査などして確認することが大事になってきます。

とくに症状が似ているのと、好発年齢から、甲状腺疾患・うつ病が隠されていることがあるので注意が必要です。ちなみに、甲状腺機能亢進症・低下症ともに月経異常・自律神経症状・精神神経症状など更年期障害と似たような症状が多く、注意が必要です。 また、重いうつ病を伴う更年期障害や、更年期に発症もしくは顕在化してくるうつ病などあります。うつ病と更年期障害を完全に分ける事は困難であり、婦人科医師と精神科医師の受診が必要となり、お互い連携しあいながら診療することもあります。

更年期障害を理解するのは、女性ホルモンの役割・女性ホルモンの年齢変化・女性ホルモン低下に伴う症状・女性ホルモン低下に伴う自覚症状以外の体への影響などへの理解が必要です。別記事でそれらについて紹介と更年期障害の治療について説明していきたいです。