ドーナツの穴…「腔」

ドーナツの穴について考えたことはありますか?
穴はよくよく考えるとただの何もない空間です。ドーナツがあるからこそ、その空間にドーナツの穴という名前が付きます。食べてしまってドーナツがなくなった場合は、その空間はドーナツの穴でなく、ただの何もない空間になってしまいます。ドーナツがあってこそのドーナツの穴です。

ちなみに、解剖用語(体の構造に対する名前のこと)に「腔」という言葉があります。お腹の中の空間を「腹腔」・胸壁内の空間を「胸腔」・子宮内の空間のことを「子宮内腔」など名前が付いています。
この「腔」という言葉は、ドーナツの穴における空間と同じだなと思ってます。例えば、「腹腔」もお腹の構造がなくなれば、ただの空間です。胸腔も子宮内腔も同様です。

基本的には何もない空間ですが、まわりに構造があって、それに囲まれて、その空間に名前が付いています。見えているものは同じですが、まわりの環境によって、見え方が違ってくることって結構多いと思います。

同じ白という色でも、背景が赤であった場合と、背景が黒だった場合で、印象が違って見えます。同じ長さの棒でも、長い棒と並べてみると短く見えるし、短い棒と並べてみると長く見えます。無意識に比較してしまっていることもありますが、同じ棒でもやはり違った印象で見えます。

人においては特に顕著だと思います。
普段無口な人が、ある人と一緒だと嬉しそうに話したり。家の中と、仕事場での別人のようだったり。普段あまり頼りない感じですが、イベントがあるとテンションが上がって何でも積極的にやってくれるようになったり。
まわりの環境によって、その人の意外な側面など見えてくることがあります。

医療の場面でも感じることがあります。医師の前だと、緊張してしまってあまりしゃべることが出来ない人など多いです。
後から看護師さんに、医師に言えなかったことを伝える人がいます。こんなどうでも良いこと医師に聞けないと言う人もいます。医師患者という立場の壁がどうしても存在しているようです。

そういった、人の側面も含めて、医師としてどう接していくか考えていくことが重要だと思います。患者への理解も深まるし、普段の診療をより充実したものになってくると思います。
しっかりと話を引き出せるような医師でありたいと思います。

予定日が過ぎて、誘発分娩をしますと言われました…誘発分娩について

妊娠40週0日を分娩予定日としております。予定日と言っていますが、あくまで妊娠管理する際の目安でしかなく、予定日ちょうどに産まれることは少ないです。 予定日を過ぎてもなかなか産まれない場合は、過期産の時期にかかってくるかどうか気にかけるようになります。その際に誘発分娩という選択肢が登場してきます。今回、その誘発分娩について説明していきたいと思います。

まとめ

・風船や子宮子宮縮剤など使用して誘発分娩を行う
・安全な誘発分娩となるように各リスクに注意する
・どうしても産まれない場合等は帝王切開となる

過期産にならないように誘発分娩を行う

過期産とは妊娠42週以降のお産のことです。この時期になると、児がお腹の中で便をして吸い込んでしまったり、胎盤機能が低下してくる等して、児の具合が悪くなる可能性が高くなることが知られています。
予定日(妊娠40週0日)が過ぎても、なかなか産まれそうにない場合、過期産に伴うリスク等を考慮して、妊娠42週前に分娩が完了するよう誘発分娩を行うことがあります。妊娠41週台で誘発分娩のための入院を組むことが多いです。また、土日祝日などスタッフが少ない日には誘発をなるべく行いたくないので、週の前半から入院することが多いです。
予定日超過(予定日が過ぎること)の他にも、前期破水・微弱陣痛・巨大児の予測・妊娠継続が母児ともに危険をもたらし妊娠を早く終了させるべき状況と判断した場合などに誘発分娩が行われます。

誘発分娩には、風船・子宮収縮剤などを使う

誘発分娩の方法は、様々あります。風船のようなものを子宮の入り口に入れて膨らませるメトロイリンテル法、子宮収縮剤の飲み薬・点滴剤を使用する方法などあります。
また、内診をする際に児を包んでいる膜を指で剥がす卵膜剥離、水分を含むと拡張する器械である吸湿性頸管拡張材など使用することもあります。

誘発分娩のリスク

誘発分娩に伴うリスクは、薬剤を使用する場合はアレルギー反応(発疹・掻痒感・アナフィラキシーショックなど)が起こる可能性があります。陣痛を促進するので、陣痛が強くなりすぎてしまい(過強陣痛)、子宮が破裂してしまうことがあります。
普通のお産でも同様ですが、陣痛が来た時に児にストレスがかかります。児が具合悪くなってしまい、経腟分娩まで時間がかかり困難と想定された場合は帝王切開になることがあります。
なので、誘発分娩中は必ずモニターを付けて、陣痛波形をみて過強陣痛は大丈夫か、胎児心拍をみて児は元気か評価します。
だいたいの場合は誘発分娩をして2-3日程度で分娩に至ることが多いですが、どうしても誘発分娩がのらない場合があります。そうした場合、妊娠継続によるリスクが高いと判断した場合は、帝王切開術を選択することもあります。

まとめ

予定日が過ぎた場合、誘発分娩のための入院が組まれる場合があります。 誘発分娩は風船・子宮収縮剤などを用いて行われます。
誘発分娩には様々なリスクがあります。誘発分娩中は、必ずモニターを装着して、定期的にバイタルサインなどを測定し、問題ないか評価することが重要です。
基本的には経腟分娩を目指して誘発分娩を行いますが、どうしても無理であったり、危険であると判断した場合は、無理せず帝王切開に切り替えることもあります。

子宮摘出手術で、卵管・卵巣も摘出するか否か…

婦人科を受診して、子宮筋腫などの手術で子宮摘出が必要と言われる方もいるかと思います。その際に、子宮と一緒に卵巣・卵管もとるかどうか説明があるかと思います。
初めての手術で、手術の説明だけで理解するのが大変で、どこまで摘出するのか聞かれてよくわからないとなる人も多いかと思います。
基本的には必要がなければ正常な臓器はそのままにしておきますが、子宮摘出の際に卵管・卵巣の摘出というオプションを考慮する場合もあり説明していきたいと思います。

まとめ

・卵管は子宮とともに摘出場合がほとんど。
・卵巣は体内に2つあり、片方摘出か両方摘出するか考える
・両方の卵巣摘出すべきは、年齢・病態など総合的に考慮する。

卵管は癌リスクを考慮し摘出する

卵管は、妊娠するにあたって、精子・卵・受精卵の通り道として役割があります。子宮を摘出するということは、自然妊娠はないので、必然的に卵管は機能面でいうと不要な臓器となります。
卵管が存在していると、卵巣癌リスクが高まることが分かっています。これは卵管から分泌される物質が卵巣癌発生に関与していると考えられています。また、稀ではありますが卵管から癌が発生してくることもあります。
なので、子宮とともに卵管も一緒に摘出することが多いです。

卵巣は女性ホルモンを分泌する

卵巣に関しては、卵巣からはエストロゲンという女性ホルモンが分泌されています。年齢とともに女性ホルモンは低下していきます。すると徐々に月経は不規則となり全体として月経の頻度は少なくなっていって、閉経を迎えます。とくに日本では約50歳に閉経となります。

卵巣は体内に2つ存在しています。卵巣を片方のみ摘出した場合は、残ったもう1つの卵巣が頑張って働いてくれます。血中の女性ホルモン値はほぼ変わらなく、閉経時期もほとんど変わらないと言われております。

卵巣がなくなると更年期症状など影響あり

卵巣は2つとも摘出した場合は、摘出した時点で卵巣からの女性ホルモン分泌はなくなってしまうため、急速に女性ホルモン値は下がってしまいます。そうすると、更年期症状(ほてり・多汗・気分不安定など)が出現してしまいます。また、将来的に骨量が減少して骨粗鬆症になりやすかったり、血中のコレステロールが上昇し脂質代謝異常症になりやすい等様々な影響を来してきます。
なので、卵巣を両側とも摘出するかどうかは、慎重に判断する必要があります。ただし、加齢とともに女性ホルモン分泌は下がってくるため、年齢によって摘出するか決めることが多いです。
ちなみに両側とも卵巣摘出した場合は、ホルモン補充療法が有効です。

卵巣を摘出するかはケースによる

卵巣を残した場合は、そこから癌化してくる可能性もあるため、定期的な卵巣の検診は必要となります。ちなみに、子宮内膜症や乳癌などは、卵巣からの女性ホルモン分泌で病態が悪化してきます。それらが併存している場合は卵巣を両方とも摘出した方が良い場合があります。また、すでに卵巣が腫れている場合は摘出することが多いです。

まとめ

子宮と一緒に卵管・卵巣を摘出するか説明しました。
卵管は、妊娠するにあたって必要な臓器ですが、子宮を摘出する際に一緒に摘出することがほとんどです。2つある卵巣を片方摘出しても、もう片方が代償して働き、影響はそれほどありません。
卵巣を両方とも摘出するかどうかは、年齢・病態など総合的に考慮して判断します。

妊婦健診で血圧が高いと言われました…妊娠高血圧症候群について

妊娠高血圧症候群とは、名前の通り妊娠経過とともに血圧が上昇してきます。ただ、血圧が上昇してくるだけでなく、母児ともに状態を悪化させるような様々な病態が複合的に発生します。無症状で水面下に進行してくる病態も含まれており、気が付いたら重症化していることもあり注意が必要です。

まとめ

・妊娠高血圧症候群は血圧が高いだけが問題ではない
・一番の治療は妊娠の終了
・自分で出来ることは、血圧変化と自覚症状に注意すること、血圧を上げない食事を心がけること。

妊娠高血圧症候群とは…

血圧上昇するとどうなるか?血圧が高くなりすぎると、血管が破裂することがあります。とくに頭の血管であれば、脳出血を来します。血圧が高いと心臓に負担がかかってしまい、心不全になってしまい、肺に水が溜まってしまったり、全身がむくんだり、呼吸苦など来たすことがあります。
妊娠高血圧症候群は血圧上昇だけでなく様々な症状や病態を呈します。蛋白尿(悪化すると血管内の蛋白を喪失してしまい、むくみ・体重増加の原因に)・HELLP症候群(肝機能上昇・血小板低下・溶血性貧血)・DIC(血液の固まりやすさの異常)・血栓症・常位胎盤早期剥離・妊娠脂肪肝・急性腎不全・子癇発作(けいれん発作)など様々な病態を呈します。
ときに重症化し、最悪な場合は母児ともに死亡してしまうケースもあります。

治療は…

一番の治療は、妊娠を終わらせることです。ターミネーションとも言います。妊娠週数が浅い場合には赤ちゃんの未熟性の問題も考慮しなければならないので、ターミネーションのタイミングに苦慮します。ターミネーションの方法は、緊急性が高く、経腟分娩で時間がかかりそうであれば、帝王切開を選択します。時間的猶予があれば、誘発分娩で経腟分娩を選択します。
妊娠週数が浅い場合には、血圧を下げる薬を使用したり、妊娠高血圧症候群の病態の悪化しないか慎重にみながら、週数を稼いでいきます。

自分で出来ることは…

自分で出来ることは、血圧変化と自覚症状に注意すること、血圧を上げない食事を心がけることです。
自覚症状はとくに、頭痛・眼華閃発(目の前がチカチカする感じ)・吐き気・心窩部痛・浮腫(むくみ)・体重増加などあります。悪化してくると、痙攣発作を引き起こしますが、 そうなってしまうと非常に危険な状態となります。
食事はカロリーをコントロールした食事をします。目標カロリーは担当医・栄養士等と相談しながら決めます。また、塩分のとりすぎは血圧を上昇させてしまうため、塩分を抑えた食事を心がけます。

まとめ

妊娠高血圧症候群は、血圧が高いだけでなく様々な病態へと進展しうる怖い病気です。血圧管理も重要ですが、その病態に対して踏み込んで治療方針を決めていかねばなりません。
ターミネーションの判断等に苦慮することもありますが、母児ともに元気に分娩に出来るようサポートしたいです。

健康に過ごすために

健康という状態が、人間活動の源であり、大前提だと思っています。健康でないと、今行っている仕事・家事・育児・介護・勉強・趣味・遊びなどの活動に支障をきたしてしまいます。
今回、健康ということについて説明していきたいと思います。

まとめ

・人間の死亡率は100%
・健康という状態は、より良く生きるための大前提
・健康を阻害する因子をコントロールすることが重要

人間の死亡率は100%

人間の歴史はとても長いですが、ずっと生き続けている人はいないです。人間の死亡率は100%であり、どんなに長寿の人でもやがて死が訪れます。平均寿命は年々長くなっております。人生100年時代とも言われていますが、長い人生をより良く生きるということが重要です。そして、より良く生きるためには健康であることが大前提となってきます。

健康とはなにか

そもそも健康とは何か?考えてみたことはありますか。WHOの定義では、「健康とは完全な身体的・精神的・社会的に良好な状態であり、単に疾病または病弱が存在しないことではない」とされています。そして、「人種、宗教、政治信条や経済的・社会的条件によって差別されることなく、最高水準の健康に恵まれることは、あらゆる人々にとっての基本的人権の一つである」と規定されています。
健康で過ごせるために何を行えばいいかは重要な課題です。巷で健康のために、これを行うのが良いとか様々な情報があるかと思います。有益な情報もありますが、根拠のない情報、賛否両論がある情報など様々な情報で溢れています。
今回紹介するのは、これをやれば健康に過ごせるというものではなく、逆に「健康を阻害してしまう原因は何なのか?」について説明していきたいと思います。

健康を阻害する3大因子

健康を阻害する原因として、メタボリックシンドローム・ロコモティブシンドローム・認知機能障害などが知られております。
メタボリックシンドロームは、内臓肥満・高血圧・糖尿病・脂質代謝異常症などがあり、それらによって心血管病変(心筋梗塞、動脈硬化など)のリスクが高くなります。
ロコモティブシンドロームは、筋力低下・骨粗鬆症・骨折・変形性関節症などによって、移動困難となってしまいます。
認知機能障害は、脳の認知機能が低下し、記憶力・思考力・判断力・注意力などが低下し、実際の行動を計画したり、実際に作業を行うことなど困難を来たしてしまいます。
これら、健康を阻害する因子をうまくコントロールすることで、健康に過ごせる期間が長くなってきます。

まとめ

健康という状態が、人間活動の源であり、大前提だと思っています。健康でないと、今行っている仕事・家事・育児・介護・勉強・趣味・遊びなどの活動に支障をきたしてしまうことがあります。健康を阻害する因子をうまくコントロールすることで、より健康に過ごせる期間は長くなってきます。
1回きりの人生なので、健康を意識してよりよく生きることが出来るようサポートしたいと思っています。

産後のトラブル…産後の発熱について

お産が無事に終わったと思っていたら、産後に発熱することがあります。産後の発熱の原因として頻度が多いものが知られています。それらを中心に説明していきます。

・頻度の多い原因は3つ

子宮感染、乳腺炎、尿路感染の3つが多いです。まずは、それら頻度の多いものから診断するために、エコー検査で子宮内遺残などの確認、腟鏡診で悪露の性状を確認、視診・触診で乳房診察、尿検査、血液検査など行います。

ちなみに、子宮感染は産褥熱とも言われています。子宮内膜炎が多く、子宮筋炎・子宮傍結合織炎・付属器炎・骨盤腹膜炎などあります。産褥熱の定義では、分娩後24時間以降で産褥10日以内に2日間以上連続する38℃以上の発熱を来す状態であり、性器以外の部位の感染を含まないとされています。
かつて、産褥熱は妊産婦死亡原因として多かったですが、抗生剤の普及とともに死亡数は大きく減少しましたが、適切な管理をしないと敗血症から死に至る可能性があるので重要疾患の一つと言われています。 発熱以外に下腹部痛・悪露異常・悪寒などの症状を呈します。悪露培養検査・血液培養検査などで原因となる菌を見つけるための検査をします。子宮内に残存物が残っていれば、それらを除去し洗浄したり、子宮収縮剤や抗生剤を使用して治療します。

乳腺炎は、母乳の流れが悪く乳腺の炎症が起こされる「うっ滞性乳腺炎」と、細菌感染による化膿性乳腺炎があります。 うっ滞性乳腺炎では、乳房マッサージ・授乳・搾乳など行います。葛根湯という漢方を使用すると母乳の出が良くなることもあります。母乳が詰まりやすい食事など言われているものがありますが、賛否両論あります。うっ滞性乳腺炎に細菌感染が起こる事があり、化膿性乳腺炎に進展することがあり、その場合は抗生剤も併用します。

尿路感染は、尿路(おしっこの通り道である腎盂・尿管・膀胱など)に感染して起こります。腟口と尿道口(おしっこの出口)が近いために産後起こることが多いです。尿検査で、尿の色や性状をみたり、尿検査で白血球・細菌の混在がないか確認します。治療は抗生剤を使用します。ちなみに、乳腺炎も尿路感染でも使用される一般的な抗生剤は、授乳の制限なく安全に使用することが出来ます。

ただでさえ産後は体力が落ちおり、頻回な授乳で寝不足だったり、コンディションは良くないことが多いです。産後の発熱は、上記以外にも偶発的に他の発熱を来たす病気(流行時期であればインフルエンザなど)が重なっていることもあります。我慢しないで、早めに医療機関に受診するようお願いします。

予防できるがん…子宮頸がんについて

子宮頸がんは、近年若い女性で増えています。とくに20・30代での増加が著しいです。子宮頸がん検診の導入で、一時減少していましたが、近年は残念ながら増加に転じています。国立がん研究センターのデータでは、1年間に約11000人が子宮頸がんと診断され、約2900人が子宮頸がんで死亡しています。その子宮頸がんですが、知識と行動によって予防可能であるので、説明していきたいと思います。

子宮頸がんの多くは、性交渉などによってHPV(ヒト・パピローマウイルス)というウイルスが子宮頸部の細胞に感染することをきっかけに発生します。HPVには多くの型があり、100種類以上が知られています。とくにHPV16・18型は子宮頸がんへの進展リスクが非常に高く、子宮頸がん症例の約60-70%(日本では約60%)で検出されています。

HPVが持続感染すると、異形成という前がん病変を経て、浸潤がん(いわゆる子宮頸がん)に伸展します。HPV感染から異形成を経て子宮頸がんに伸展するまで、通常は数年以上を要します。子宮頸がんに伸展するまで時間的猶予があることがポイントです。

・子宮頸がんの予防法は…
子宮頸がん検診・HPVワクチン

子宮頸がん検診は、浸潤がんに至る前に前がん病変の状態で発見し治療を行うことで、浸潤がん発生を予防することが出来ます。 HPVワクチンはHPV感染自体を予防することで、前がん病変の発生をも予防することになります。現在日本で摂取可能なHPVワクチンは2価ワクチン(HPV-16・18型の感染予防)と4価ワクチン(HPV-6・11・16・18型の感染予防)があります。HPV-6・11は、がん発生には関与しませんが、HPV-16・18型は、日本における子宮頸がんの約60%で検出されています。つまり、単純計算ですが、日本においてHPVワクチンによる子宮頸がん減少効果は約60%と考えられます。

子宮頸がんは、ワクチンと検診でそのほとんどが予防可能です。HPVワクチンによってHPV16・18型が原因の子宮頸がんは予防できるので、日本における子宮頸がんの発生自体が約60%減少します。そして、このワクチンでは予防できない型のHPV感染が起こった場合も子宮頸がん検診を継続的に受診することで、そのほとんどを前がん病変のうちに診断・治療でき、子宮頸がんへの進展は防げることになります。

そもそも産婦人科受診は、ハードルが高いと思います。日本における子宮頸がん検診の受診率は約40%と低い状態です。なので、他症状で産婦人科を受診した患者さんに対して、子宮頸がん検診をほぼルーチンで勧めています。 HPVワクチン接種に至っては、副反応に関しての過剰な報道によってワクチン接種自体が萎縮している状態です。先進国において子宮頸がんの罹患が低くなっている中、増加しているのは日本くらいであり、問題となっています。

子宮頸がんは、定期的な子宮頸がん検診とHPVワクチンによって撲滅できるガンです。正しい知識と行動によって子宮頸がんを予防していきましょう。

妊娠中にヘルペスになったら…

ヘルペスは口唇・性器など全身の皮膚や粘膜に浅い潰瘍・水疱(水ぶくれ)を形成する病気です。単純ヘルペスウイルス(HSV:herpes simplex virus)1型またはHSV2型というウイルス感染によって、それらの症状が引き起こされます。部位によって名前がついており、口唇であれば口唇ヘルペス、陰部であれば性器ヘルペスなどあります。また、HSVは神経に感染し、ピリピリした痛み・やけどのような痛みを呈します。また、一度治っても神経節などに潜伏感染したHSVが、免疫が低下した時など再活性化されて、病変が形成されることがあります。

赤ちゃんに感染すると、皮膚・目・口に水疱が形成したり、発熱・けいれん・哺乳不良・不活発性などが起こる可能性があります。場合によっては、肝不全・呼吸障害まで進展し多臓器不全で死亡することもあります。死亡まで至らなくても、神経学的な後遺症など残すこともあります。

・妊娠時期によって対応は違う

性器ヘルペスの病変が認める時期によって対応は違います。 妊娠初期であれば、塗り薬(アシクロビル軟膏)による治療と、病変を刺激してしまわなように性交を控えてもらいます。 妊娠中期・後期では、アシクロビル・バラシクロビルの飲み薬や点滴による治療を行います。 分娩時期が近い場合は、経腟分娩時に産道から児への感染するのを予防するために、以下の場合に帝王切開での分娩となります。
①分娩目的に入院した時(陣痛・破水など)に性器ヘルペス病変を認める、あるいは強く疑われる場合
②初感染初発発症から1ヶ月以内に分娩となる可能性が高い場合
③再発または非感染初発で発症から1週間以内に分娩となる可能性が高い場合

感染経路は産道感染以外にも、胎内感染や水平感染(分娩後の児との接触による)などもあり、残念ながら帝王切開で完全に防ぐことはできない。妊娠中に単純ヘルペスウイルスに感染して無症状(もしくは症状を自覚しない)場合もあり、母子感染の完全な予防は困難と言われています。 また、性器ヘルペスを何回も再発する人は、妊娠中に病変がなくても、妊娠36週以降から分娩するまで、アシクロビル投与すると帝王切開率が下がったという報告があり、再発予防として行われることがあります。

再発型ではウイルス量は比較的少なく、児への感染率は低いとされていますが、新生児ヘルペスになった時の重大さを考慮すると何かしら対応をした方が良いと考えられます。

現代人は月経が多い! 月経とピルについて

避妊を目的に使用されるピルですが、避妊効果以外にも実は月経に伴う痛みを抑える効果や月経量を少なくなる効果など副効用も知られていました。副効用を主効用として狙って、月経困難症や、子宮内膜症に対してピルが保険適応されるようになった流れがあります。

ピルは、エストロゲンとプロゲステロンの合剤ですが、避妊目的で使用されるものをOC(Oral Contraceptive:経口避妊薬)。月経症状の改善や子宮内膜症など疾患の治療目的で使用されるものをLEP(Low dose Estrogen/Progestin)と言われています。

最近では、低用量ピルの連続投与によって月経の来る頻度を最大で120日間(約4ヶ月)に1回に減らす治療もあります。体質によっては、120日間より前に月経が来てしまうこともありますが、上手に利用すると月経をコントロールすることが可能です。どうしても月経が来て欲しくない日に月経が来ないようにずらすことも可能です。

近年の少子化の流れもあり、現代人は妊娠・出産数が昔と比べて少なくなっており、月経を経験する回数が増えていると言われています。月経によって悪化する子宮内膜症の頻度は増えています。また、月経に関する症状も多く経験することになります。

ちなみに妊娠1回すると、妊娠期間中の約10ヶ月間は月経来ないのと、産後も2-6ヶ月くらい(授乳の有無や個人差によってだいぶ変わりますが…)月経来ないです。(なお、産後月経はなくても排卵している場合があるため、妊娠する可能性はあります。なので、産後すぐに妊娠を望まない場合は避妊が必要です)。1回妊娠すると、もともと月1回月経来ていた人は、12-16回程度月経回数が少なくなることになります。 昔の子沢山の時代から比較すると圧倒的に現代日本人は月経を経験することが多くなっています。戦前までは、生涯月経回数は50回程度と言われていますが、現代では生涯月経回数は400回程度と言われています。晩婚・少子化に加えて、栄養環境が改善され発育が良くなり初潮(初めて来る月経のこと)の低年齢化していることが原因と言われています。

薬をうまく活用して、月経回数を減らすことも可能です。さらに月経の症状をコントロールすることも可能です。月経とうまく付き合っていくことが、女性の健康管理や生活の質を上げることにつながると思います。

生理をずらしたい!月経移動について

ちょうど生理(月経)が来る日と旅行が重なってしまう、大事な日に生理が来てしまうなど、どうしても生理が来て欲しくない日があるかと思います。 そんな場合、薬によって月経をずらすことが可能です。ただし、あまりに直前過ぎると月経の日を調節することが難しい場合もあるので、事前に受診して相談しておくことが大事です。

月経を移動するために、女性ホルモンと黄体ホルモンを含む中等量ピルと呼ばれている薬を使用します。ちなみに、避妊のために使用されるピルは含まれる成分が比較的低用量であり、低用量ピルと言われています。

月経を遅くしたい場合は、月経の予定日の3-5日前から中等量ピルを内服開始します。そして、月経が来ないで欲しい日まで連日内服します。内服が終了すると、個人差はありますが、2-5日程度で月経が来ます。 逆に月経を早めたい場合は、月経開始5日目から中等量ピルを内服開始します。そして、月経を来たい日の3-5日前まで(最低でも10日間以上内服の継続が必要)内服します。投与方法を守らないと失敗する場合があります。 月経を早める方法は、中等量ピルの飲み始めの時期が限られていること、結果として月経を7-10日程度しか早めることが出来ないこと、失敗することが多いので、通常は遅らせる方法を選択します。

うまく、薬で月経を移動させて、どうしても月経が来てほしくない日を避けるよう調節して、快適な生活を過ごせることを願っています。